2010/12/18

無実

父親と思しき男が欲しがるタバコを貰えずに 「Putain!」と私に吠える5、6歳の小さな少女。

モンマルトルで出会ったのスリを商いとする、目をギラギラさせた少年。
私と目が合う。
私が見ているのを承知で、大胆に財布をスル。
3回目出会った時、彼は目の前で男性に取り押さえられる。

ムーランルージュ前の通りで私の鞄から財布を盗もうとした小さな少年。
振り返ると、あどけない苦笑を浮かべて、懇願する。

ミラノ駅で夜中じゅう駅を徘徊し、目を光らせる少年。
視界の端に潜む小さな少女が寒そうに手足を暖める。

アテネの世界遺産を背景に裸足でサッカーボールを蹴る少年。
フェンスで仕切られた小石だらけの広場と観光客が行き交う世界遺産。
行き宛も無い老犬が少年を只眺める。

ギリシャとトルコの国境に住み着く野良犬。
国境沿いに入念に張られた防波ネットと数台の戦車が国境と国籍、人種を制圧する。
恐ろしい形相の兵士が私に問いかける。
この時点では私は犯罪者 未満 の様な扱いを受ける。
問診の最後にようやく目に光を宿してくれる。
心のみ無視して。

サクレクール寺院前の広場で林檎をかじる少年。
3口目で忘れられる林檎。
皆が忘れ去った後、破損し、砕け散って、バラまかれ、鳩の餌にもならずに、こびりつく。

朝のメトロの中で林檎をかじる赤いコートを着た少女。
おもむろに雑多な鞄からとリ出すのは真っ赤なその場でかじりつく為の林檎。

己を知る男。
己の尺度を他人と共有するべく、己の尺度で他人を計る男