それは、ある雪の日の話し。
その日はグレーがかった空から真っ白い雪花がちらついていた。私は学校をおえて一人で帰路を辿っていた。あまりにも寒いので、むき出しになった脚は林檎模様に変わっていた。あたりはみるみるうちに白くなり、まるで凍ったかのようなシンとした空間を作りだした。冷えた空気が鼻先を突き刺す。空と雪花の作り出す独特な緊張感が絶妙な神秘性を作り出していた。私は手袋でほっぺたを暖めながら歩いた。。。
すると道端にちいさなスズメが横たわっていた。その異様な空気に私は吸い寄せられる様に足取りを止めた。
彼女は死んでいた。
まだ、暖かみを帯びた羽が小さく揺らいでいる。私の小さな心はドクン、と一なり大きな音をたてた。
帰路を進めなかった。
気がついたら、左手の暖かい手袋で彼女を抱き、手袋を取った冷たい右手で地面を掘っていた。
ごつごつと硬い大地はなかなか掘り進めない。辺りにあった石ころや木の枝でガリガリと掘ってみるものの思うように作業は進まない。
次第に右手の感覚がなくなってくる。
爪は黒くにじみ、血管が縮み、みるみる色が変わってしまった。
幾分かたった頃、ようやく彼女が入るだけのスペースを確保できた。
左手でそっと暖まった彼女を置いてみる。
ぴったりだった。心の中で小さく「さよなら」をつぶやいた。そして、少しずつ包み込むように土をかけた。
それはまるで何かの儀式だった。
普段許されない事が許される必要行為へと変わる瞬間。
只静かに雪が土に落ちては消え、落ちては消えを繰り返す儀式。
普段許されない事が許される必要行為へと変わる瞬間。
只静かに雪が土に落ちては消え、落ちては消えを繰り返す儀式。
やがて彼女とのお別れが澄むと、道端に咲いてあった小さな花を添え、精一杯のお辞儀をして去った。
死をホオムル。
その意味を感じた。
僅か9歳の旅立ちだった。