2014/11/05

こんな夢を見た 第二幕 (ふくやまアート・ウォーク2014)


 http://ha-nnn.wix.com/konnayumewomita#!untitled/cs13

 2010年から開催され、毎年奇抜なパフォーマンスや各種ワークショップを開催するアートフェスティバル、ふくやまアート・ウォーク2014に「こんな夢を見た」も11月2日・3日の二日間、参加させていただきました。

 今回、参加させていただいて思ったのは、まず、関係者の方々皆さんがこのイベントの為に楽しんで尽力している事が本当に伝わってきて、単純に嬉しかったです。
 各々が、各々の出来る事を、きちんと正当性を持って行う。ただそれだけの事が、結果として、イベントに参加頂いたお客さまにも、楽しんで頂けたのだと思います。
このイベントに参加できて、本当に光栄でした。
ありがとうございました。

 第二幕の演目については、今回も正しく夢のような体験をお客様と共有できたのではないでしょうか?
 白昼夢に繰り広げられたセレモニーの数々が、夢を模して新たな感覚を宿す。


FUKUYAMA ART WALK 2014

[主催]   福山城アートプロジェクト実行委員会
[主管]   福山商工会議所
[後援]   福山市教育委員会・広島県立歴史博物館・
      ふくやま美術館・福山城博物館・
      公益社団法人福山観光コンベンション協会・
      福山市商店街振興組合連合会・
      広島県東部観光推進協議会・エフエムふくやま
     (順不同)
[キュレーター] 櫛野展正・ヨシダコウブン
[協力]   福山大学学友会執行部・市民ボランティア
[助成]   公益財団法人エネルギア文化・スポーツ財団
      一般財団法人義倉
[H  P]   http://art.bingo-web.net/

2014/08/13

直島、豊島。


3年ぶりに直島。
お泊まりは5年ぶり。
その足で豊島にも再訪。

観れていなかった李禹煥美術館、豊島美術館、心臓音のアーカイブ、横尾忠則美術館を中心に回りました。
今回は知人の案内を予て泊まりにしましたが、この4つをメインに廻るなら一日で廻れそうです。

久々に島を巡ってみて、2009年から直島が変化し続けているのを、関心深く感じました。
夜遅くまで空いているバー、いたるところに出来た民宿、煌々と光るネオン管。
異国感。

中でも、一番びっくりしたのは、宿主も、カフェのオーナーも、漁港のおじちゃんも、みんな、みんな、全員が島にある作品を自分の孫子のように語る事。
以前は、島民のみなさんの作品に関する話し方はどこかよそよそしく、距離を感じたように思えたのですが、この数年でその様子が一転した様です。

ここでも、また思い出すのは、単なるプロジェクトが文化に変わったと言うお話。
きっと、ここも、あの土地の様に、自発的に何かを生み出す様になるのだろうか?



2014/08/12

塩江美術館ワークショップ「今日の日を送ろう」




無事終わりました。
雨の中、大人も子供も元気いっぱいにポストカードを作ってくれました。

何気ない、この日、この時をメモリアルな何かに変化させてしまうこのワークショップ。
個人的な記録データを個人宛に出力し直し、手紙として投函して来ました。
今頃は、誰かの手に届いている頃でしょう!

やや実験的な箇所もありましたが、記憶の媒体変化(写真(デジタル)から紙(アナログ)への体状変化)とそれに伴うデジタルとアナログの通信は、年齢や個性によって違いが大きく、興味深いものでした。

今回、私にとっても素敵な体験ができました。
ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。

2014/07/26

美術館の日ワークショップのお知らせ。






「今日の日を送ろう」


美術館の日に撮影した写真やデジタル機器に残っていた写真を使って、オリジナルポストカードをつくります。
美術館の日の記念ハガキを誰かに送ってみよう。

[日 付] 2014年8月2日(土)
[時 間] 10:00〜12:00、13:00〜15:00
       適宜受付(所要時間 約30分)
[場 所] 高松市塩江美術館 情報コーナー
[参加費] 無料(美術館の日は観覧料も無料)
[講 師] HANNA

http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/5041.html

2014/07/17

一日の諸々




朝起きて、身支度を整え、一日必要な事柄たちを準備してから、慌ただしく家を出た。
約束の場所に着いてから、時間を間違えていたことに気づく。
せっかくなので、先に私用を済ます事にした。
以前から、数年前に壊れてしまった古い時計を治せる時計屋を探していたのだが、8年たってようやく、修理ができそうな職人を紹介してもらったので、今日は修理に出す予定だった。

6分後、丁度、店が開いた頃に到着。
閑散とした店内には、大きな古時計がガタガタに積み重ねられ、奇妙に陳列されている。
ひょうひょうとした店主が、私の時計をみるなり、
「あーだな」「こーだな」と言って、修理に時間がかかる事を告げてから、あっさりと修理を引き受けてくれた。
そして、聞いてもいないのに、店内の修理中の時計を、解説しながら見せてくれた。
私は適当な相づちを挟みながら、以前、ネオン管職人を尋ねた時の事を思い出していた。
その時の職人も同じ様にたいそう熱心に己の手の職を見聞せてくれた。
一通り、職人にお礼を言って、きっかり1時間で、前にいた場所に戻った。

その後、MIMOCA近くの駐車場に車を入れ、「拡張するファッション」展へ。
受付でチケットを手に持って進む用促された後、駐車券と駐車時間について説明されてから、足早に階段を上がって、何回目が合っても笑顔の監視員さんを3、4人横目に、足早に階段を降りた。
本展を挟む様にして、2階の展示スペースには猪熊さんの常設展もあったが、斜めに眺めただけだった。
出入り口付近でBlessやらSusan Ciancioloを発見し、おもわず足を止めた先で、光の演出に気づき、わざとその中を遠てから外へ出た。

駐車料金を精算して、予定通り秘境に向かって出発。
川を超え、山を越え、坂道をひたすら登り、再び開けた空間が現れるまで前へ、前へと進む。

まもなく到着した秘境では、幾人もの行商人達が競りを行っていた。
大きな眼鏡と白髪頭の男、やせた手足にまるまると突き出たおなかの男、くたくたのシャツと、大きすぎるズボンを革のベルトでとめた男、小柄で足を引きずった男。
皆、様々ではあるが、一貫して太く丸い指先と、黒い詰めをしている。
響き渡る声と声。
交わされる金銭と商品。
机を買う者、椅子を買う者、ランプを買う者、着物を買う者、扇風機を買う者、軒下の装飾を買う者、刀、槍、、、
程なくして競りが終わると、5、6人の男を残して、皆足早に去っていった。

帰路、やたら大きいく、朱色かがった黄色をした月が、黒や灰色の雲と青い山の間から見えた。
雲が形を帰るたび、月は半月にも、三日月にも、満月にも見えた。
山を7つか8つ越えた先で月を見たが、やはりいつもより大きく、赤い月であった。
それは奇麗だった。

私は、新たに動き出した時計が、手元に戻ってくるのを、ここで待っている。

2014/06/28

夜を渡る

窓から入ってくる空気は少し冷たくて、火照った体に心地良い。
今日も窓は開けておくんだ。
きっと、すぐそこで耳を澄ませてる。


いくつかのイマージュ。
交わされる目線。
落ちた先から、溢れだす。

積み重ねられたイメージのかけら達を、拾い集めて、
今夜、今日の日を、送ろう。


2014/06/27

昨日から急に時間ができたので、溜まっていた用事を一つづつこなしていく。
すべての用事が必要にかられていて、やらなくてはならない事。
その先にはいつも、誰かがいて、ひつような事。
あれも、これも、それも。
今日はいったいいくつの事を終わらす事ができただろう?


「窓は開けておくね」
時計が12時をまわるのを待って、今日はもう寝よう。

2014/06/03

とめどない事達

最近、出入りしている工場がある。
二階建てで、倉庫と事務所が繋がった不思議な作りになっていて、ペンキと埃が入り交じった匂いがする。
いくつもの色の跡が無造作に散りばめられた床の上を、遠慮がちに縫う様に歩く。
誰も居なくても流れ続けるラジオと扇風機の音が無意識に耳に入ってくる。
ラジオは永遠と雑談かニュースの一部始終を配信し続けている。
もしくは、通販か法律事務所の宣伝。
扇風機はただ、苦しそうに唸り続ける。

ーーー

開け放たれた窓から、差し込む光は緩やかに陰っていった。
雨音がかすかに聞こえた様な気がした。
流れだす空気。

「おやつを残していたのね。」
「甘いものは嫌いなので、、、」
「楽しみがなくて残念ね。」
「そんな事もないですよ。」
「御せんべいなら大丈夫?」
そう聞かれたので、笑いながら会釈を返した。

帰り道、湿った空気と草の匂いがした。
山間の奥の方の低い空はプルシャンブルーと、レモンイエローが混ざり合い、その下を、灰色の鱗雲が覆っていた。

先週の日曜日に見たドキュメンタリー映画を思いだした。
工房での日常とそこに集う人々を追った内容で、何度も、空を見上げるシーンがあった。
主な人物の話し声が、どこか聞き覚えのある声に似ている事に、今になって気がついた。
ふと、ある会話を思い出した。
それは映画の中の会話だったのか?

「矛盾しているのです。
そういうモノなのです。
だってそうでしょ?
考えてごらんなさい。
いつまででもそれではいけないのです。」

どこかの懐かしい声なのか、どこかで聞いた話だったのか。
それとも違う何かか。

2014/05/07

巡る



数日前の話。

目下、所要で福山へ。
瀬戸大橋を渡り、海の色が次第に鮮やかなコバルトブルーに変化する様を横目に、2時間と立たないうちに到着。
旧家の立ち並ぶ町を足早に見て回る。

知人と合流し、鞆の浦のヤンキー展も覗いてみる。
ちょうど、アール・ブリュットの本を読んでいた所だったので、期待を膨らましたが、予想していた内容ではなかった。

休憩を挟んで、いよいよ目的地。
要件をすませ、様々な可能性を探る。
そう遠くない未来に、今度はどんな夢を紡ごうかな。


帰りは友人の住む児島へ足を伸ばした。
毎回、再会を心待ちにしている友人。
パリ時代、同じ釜の飯を食べた頃からの縁だ。
いつ会っても絶大な熱量で私を迎え入れてくれる。

この日も、例の通り、近所の藤田で乾杯。
夜を通して語り合うのは、決まって、未来の話。
只、一つだけ変わった事があるとすれば、あの頃、語っていた様な願望の話ではなくて、近い未来の要望の話。

私たちは夢も未来も創造する。
過去から巡るすべてで、過去以外のすべてを



2014/04/24

よっつのワルツ



いくら言葉を駆使して、選んで、余白の力を借りても、包まれた中身は不確かで、信じれるものは何も無い。
それでも、人は言葉を選択し、創造的な素材として操る。
素材の色色に心すら躍らせる。

只、一つ確かなことは、あの日、あの瞬間に、光の先に今を紡ぐ動機となるほどの熱量をもった美しい事柄の一つを感じたと云う事。

それはオブラートに包まれた言葉や、余白をイロどる素材の何かではなくて、真実に連結する全て。


昔、パリ郊外の片田舎に住んでいた頃。
大きなお屋敷の小さな部屋が、私が借りた最初のアトリエだった。
まだインターネットも通っていなかった。
部屋に時計すらなかった。
それどころか、スーパーに行く事も出来ず、話す人もいなかった。

完全なる隔離。
私はあらゆる欲求から完全に孤立していた。
毎日、スケッチや油絵を描いて過ごした。

机の上に並べられた絵具、パレット、キャンバス、スケッチブック、望遠鏡。
小さな窓、外には大きな庭があり、時折、近くの鳥の鳴き声と、遠くの不思議な音が共鳴して私の興味を魅いた。
遠くの方には川が流れているのが見えた。
その向こう岸は霧に包まれていて、よく見えない。

毎日同じ、
同じ部屋、同じ窓、同じ庭、同じ、、、光。
光が自然を変化させ、自然が光を明滅させる。
相互的な共鳴が破壊を産み、何もかもを新しく現し変えた。
毎日違う部屋、違う窓、違う庭、違う世界。

すべては、光の速度を認識する為の実験だった。

「光のための光、色のための色を求めるのではなく、光や色は表現の手段と考えるべきである」

2014/04/19

秘境巡り

3月のイベントが終わるやいなや、体調を崩した。
体に蓄積された疲れを排除する。
私はいくらかの休養を自らに課した。

時間を勝ち取った私は、すんなり体調を取り戻すと、パリから遊びに来てくれた友人と四国の秘境巡りを決行。

とある山の山頂を目指そうと、見知らぬ山道を、ずんずんと登ったのは良いものの、頂上で立ち往生。
その上、ガソリンが底をつきかけ、、、。
不安は募る一方。

もはや目的地がどこにあるのかも分からぬまま、繋がらない携帯を片手に、作戦会議。
あても無く、やや下り坂になった道無き道を進む事にする。
しばらく進むと、道が道らしく広がりを取り戻してきた。

ほどなくして、民家らしき建物が見えた。
しかし、近づいてみると、目前には、赤い布を結びつけたフェンスがふさいでいた。
車を降りて確認すると、幸いにも通り抜けれそうだったので、そのまま直進する事にした。

 曲がりくねった道を大きく廻ると、その先には農村のような、人の手の行き届いた斜面が広がっていた。
 赤い椿が山道を飾り、青い空、青いトタン壁を背景に見事に咲き誇っている。
落ち葉一つない道端にはエンブレムの付いた日産自動車が緑色のハウスにしまわれており、その出入り口をブラウン管テレビが塞いでいる。
 その、民家の向かいには、端正に整備された棚田が広がっている。
張り巡らされた水に、太陽の光が反射して、青く、白く、キラ、キラと輝いて見える。



まるで時をとめられたかのように、白雲が山頂をゆっくりと包み込む。
どこからか空耳が聞こえる。
やまびこ。

土に向かう農婦。
会う話。
笑顔、手、指先、道筋。

発した音が、再び跳ね返る前に、また目前に現れた開かれたフェンスを通り抜ける。

その後も懲りずに越境。越境。
いろいろあったけど、時間を得る為の、良い時間だった。


それから、

2014/04/11

君は世界をあくびする

胡粉の塗られたキャンバスに雲母を重ね塗る。
そこにラピスの11番が加わり、水晶、蛍光ピンクが全く中和されないまま重ねられる。
黄色が足りない。

破壊する。

私は何のイメージも残さない。
植えつけられたイメージを削除する。
何の情報も与えない。





カーテンの隙間から強く現された影達が、無数の光の玉を何処に留めるでも無く漂っている。
閉ざされた瞼に、陽炎が写る。
其れ等の光の変化を読み取って、中にしまわれた眼球がギリグリと動く。
ゆっくりと瞼を開ける。
現れた視界は色を持たない。
モノクロームの様に思えた。
私は、そのモノクロームが虚栄だと知っている。
熱くもなく、寒くもない光の温度が頬に血を通わす。

「またね」
耳の奥に取り残された会話。
その、発せられた音は、乱暴に、御座成りなまま、意味も無く接触し、反響する。

その傍らで、
君は世界をあくびする。

2014/03/26

特筆すべき事は何も無い

特筆すべき事は何も無い。

夢の中の光が瞼を覆う。
始まりと終わりが同じ夢。

光がすべてを覆い尽くして、何もかもが認識できなくなる頃、そこはいつか目指した場所だろうか?

行為。
与えられ、与える喜び と、与え、与られる暴力。

その関係性により、人は熱量を消費する。
破壊する。



2014/03/14

嘘にならない嘘

あの時も、あの時も、あの時も、
口を衝いて出る言葉はいつも同じ。

その言葉はいつも願望と欲望が入り交じった、一つの願いに過ぎない。
無常な人の世を、心を、どうすることも出来はしない事を認めつつ、人は希望を込めて、あの言葉を伝える。
別れの合図。
未来を意識した、約束にならない別れの言葉。

それでも、口を衝いて出てしまうのは、まだどこかに、希望を信じているから。
かもしれない。




2014/02/11

旧藤田外科アートプロジェクト特別企画「こんな夢を見た」

イベントのご案内です。

不可思議な入院体験ができるオールナイト企画!!


来院はhttps://www.facebook.com/konnayumewomitaへアクセスすると道案内して頂けます。


徐々に明らかになる真相。
夢はどこから始まり、何処から終わるのか?


その他、院内情報はhttps://twitter.com/konnayume0308にて配信中。
隠し部屋(ナース部屋)もあるよ!




2014/01/23

ニュートラルな誘惑



今になって、彼が何を言おうとしていたのか理解できた気がした。

言葉を理解するには同じデーターベースが必要だった。


あの時の会話は常に平行線でしかなたった。


総じて、なるほどな、と思った。


人とは、個とは、群とは。。。

2014/01/19

贖罪



祖母がその犬を飼いだしたのは、あまりにも突然の事だった。
きちきちと整理された家のちょうど真ん中あたりに、小さなゲージまで用意した。
しかし、ほどなくしてあっけなくその犬を手放した。

行き先に困った犬は、仕方なく私の家に来た。
生後数ヶ月ほどのミニチュアピンシャで、名前はすでにあった
シッポを丸め、物音がするたびに、やたら頭に響く声で吠え続けた。

それでもどうにか、食事にありつく方法を身につけ、それなりに芸も覚えた。
ただ、臆病な性質は変わらず、四六時中、昼夜かまわず吠えまくった。

ある日、どういう好奇心にかられたのか、彼女は階段を登ってみせた。
彼女の視界に開けた、いつもと違う空間にカチャカチャと爪が床に刷れる音が弾んでいた。
そして、この新境地を一通り見て終え得て、階段の前まで来た時、その足音を止めた。
階段の角に片足の爪をかけてははずし、きゃんきゃん吠えた。

その音は、恐ろしく耳障りな声だった。

彼女の小さな冒険は何回も繰り返され、彼女は少し階段を降りる勇気を持ち始めていた。しかし、決まって階段の上できゃんきゃんと吠えた。
繰り返されるその行為はまるで進歩がないように見えた。
その度、やってきた手に助けられて、階段を降りなくてはならなかった。

その日、例の様に、階段の上で下に向かってめいいっぱい吠え続けた彼女は、ぐっとかがんでは跳ねた。
さらに激しく吠えては、固い床に爪を立てた。
その音は鳴り止みそうになかった。
やがて、気を動揺させた足に彼女の足が救われて、彼女は階段から転げ落ちた。
ぎゃいん。
悲痛な鳴き声が無情に響いた。

年をいくつか重ねた後、その犬は時おりのみ吠える事を許された。
もう階段を降りようと試みる事はない。

時々、読書をしている私の膝の上に乗って来て、片足で私の手をトントンとつつく。
私は彼女の首もとを撫でてあげる。
彼女はさらに体をすり寄せて、満足そうに、その身を私の膝の上に降す。

2014/01/17

侵入者

「与えるって言うのは、暴力行為なんだよ。」
置き換える様に言い残す。
残された私は、また待ち続ける。

ある晴れた日、古い蔵の中を探索する事が決まった。
長らく、文明と接続を絶った、未知の領域に、幾分か興味をそそられた。

幾人かの仲間と共に、重く分厚い引き戸を無理やり引くと、バラバラと壁の砂が溢れた。
目の前の視界が開けると、隙間から差し込んだ光が先ほどの砂埃を反射してキラキラと浮遊している。
辺りは誇り臭かった。

所狭しと乱雑に詰め込まれた民具の隙間を、大股でまたいで奥に進もうと試みるが、どうにも進めそうにない。
諦めて、戸のすぐ側から登れる階段を先に上がって、屋根裏から覗く事にした。
上階へ進む道中の軋む音にも躊躇無く進む。

誰かの写真がバラバラに押し詰められた木箱が足下にあった。
若い男女が海辺で映っている写真だった。
そこには、白人女性と、日本人らしい東洋人男性が、ビーチチェアに座っていた。

妙に興味をそがれた気がしたが、程なくして他のものに心奪が止まった。
誇りで黒くなった私の足下には白骨化した猫がいた。

せいとせいの活動を破壊し、補う、そして、与える。
不完全なそれ。


2014/01/09

こんな夢をみた


VER.1

こんな夢を見た。

青白く光りだした上弦の月を、ただ心地よく眺めていると、冴えた調子で、もし、と呼ぶ声が耳に入った。

女の声だった。

やや緊張感を含んだ声色に魅かれ、声の方へ向き返ると、白練の狐面をつけた女が立っていた。

女は、白い衣の前で重ねた手をほどいて、ゆらゆらと手招きしてから、音も無く歩き出した。

向かった先には、面妖な病院があったーー





2014/01/04