2013/03/31

ゆれる


凍てついた風をきって歩くと、洗い立ての髪が風を通す心地よい音が聞こえる。
紫色に染まった手と、高くなった灰色の空から過る太陽が季節の変化を思わせる。

取り分け理由を探す必要もないが、昼だというのに眠い目を擦りながら、アパートを出てきた。
ナップサックを背負った旅行者が上と下を交互に見比べながら右往左往している。
そういえば、数週間前からバスが渋滞したり、やたらとノートルダムに人が集まっていた。
信号の変わるのを待たずに、道路を足早に渡って、取り留めの無い買い物を済ませる。

大通りに出ると、透明なビニール袋が風に煽られて音も無く舞い上がっていた。
急な追い風にビニールは大口を明けて、体一杯に空気を含み、まるで自らが飛んでいるかのように、勢い良く駆け上がって、フワフワと気持ち良さそうに浮遊している。
まるで浮かんでいる事を楽しんでいるかの様に、
あちらへふらふら。
こちらへふらふら。
ふと、通りかかった車に引力を加え得られて、地面に伏せると、無言のまま床に伏せた。

空は高い。

4月からはまた新しい場所に移り、新しい環境で生活の続きを始める。
少しづつ問題になっていた事柄が現実味を帯びてははじけ、別々の事柄が
複雑に絡み合い、ほどけなくなっていた。
それがある事をきっかけに、一気にほどけ、一つの道へと繋がり始めた。

縁と縁が偶然と必然で繋がれていて、その糸を辿るならば、時として、自分の意志とは関係なくても、つき動かされて、変化を受け入れざる負えなくなる。
そうして振って湧いた変化に身を委ねて、地軸を失ってみて、地を見下ろしながら軸を探している。

乾いた目を伏せながら、光の変化に瞳の瞳孔が反応するのを感じとって、よたよたと帰路をたどった。